読書。「隠された風景」

ツルゲネフ

2010年10月25日 00:29



「隠された風景」 福岡賢正著 南方新社


とにかく、私が読む本は重ーい重ーい、テーマが多い。
気楽に読めるエッセイとか旅行記なんかは、昔はよく読んだものだけど。
普段の生活では一見「関係なさそうな」、しかし「実は身近な、とても大切な」世界をどんどん本を通してのぞいていきたい。
この本は、その入り口、的な本だ。
これも、特に若い人々には読んでほしい本かな。

本の中でとりあげるテーマは三つ。

・処分されるペット
・屠畜
・自殺

要するに、ふだん生活しているうえではほとんど目にすることのない、「隠された風景」を取材している。
「死」ってほんとうはとても自然なことなのに、自分が目にしている人間も動物もすべて例外なくいつか死ぬのに、上記三つのような形で直面する「死」は目を背けたくなる。

そして、そういう死に関わる現場で、「仕事」をしている人が必ずいるということ。


捨てられた犬猫の捕獲・処分を行う業者。
動物愛護団体から抗議や非難の手紙がくる。
「そげん命を救いたかなら、毎日ここに来てんない。犬から猫から全部やるけん。毎日何百匹てやるけん。」
ほんと、その通りだ。
抗議するくらいなら、愛護団体が全部引き取って育てればいい。綺麗事を言う輩は嫌いだ。

他の、同業者のことば。
「私はここにくる犬猫たちを処分しているとは考えていません。生あるものには必ず死が訪れます。人間社会の中でしか生きられないペットが、人間社会からはじきだされたら、寿命が尽きたということ。その寿命を、最後に恵まれた環境で全うさせてやろう・・」


毎日、スーパーに並ぶパック詰めの肉。
誰かが、苦労して屠畜している。


世間からの差別や偏見に悩む、彼らの仕事。
感謝しなければならない。心から、毎日。


自殺や事故死、殺人などの遺体の特殊清掃を生業にしている人の、ブログがあります。
彼らの苦労、命に対する考察、いろいろと勉強になると思います。
読むのに勇気がいる描写も時折ありますが、こういった世界について知りたい方はどうぞ。

特殊清掃「戦う男たち」 http://blog.goo.ne.jp/clean110/




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